EVERYTHING IS

想起特訓。忘れかけたことを思い出すのだ。

「I CAN'T EVERYTHING」

 自信を持ってなにもできないと叫ぶべきだ。
「I CAN'T EVERYTHING」
 諦めたくないから、信じたくないから怒ってる。
 自分にとって不都合な真実はいつだって認めたくないよな。
「わかるよ……」
 わかられたくないってことが、よくわかる。
 人を死に至らしめる虐殺の文法があるなら、人を強制的に生きながらえさせる生の文法があるかもしれない。
 伝わらないことに意味を見いだすなんて、自己満足この上ないね。
「独りよがりで、フラフープを回していて、いつの間にやら餓死してるみたいな」
 赤いフラフープが回転していて、その円の中には誰も入れない。
「君に届かない」
 届くっていう幻想と、死にたいんだけどっていう緩慢な退屈さが、壊したくて壊れたくて、殺したくて殺されたくて、生きたくて死にたくて。アンチノミー
 矛盾が螺旋のように渦巻いて、身も蓋もない犯罪行為に手をそめたい。
 たらればでできている未来が、過去が、経験しえなかった希望が、今を否定するよりよい未来が、今ではない輝かしい過去が、すべてが今ではないから。
 脳内にある自分だけのキャンバス。
 書き直してはまた、やり直しはできないってことに気づいている。
 どうしたって一回きり、この瞬間のことを忘れないでいたいと願えたならば、
 ここにいるよと証明できる。
 簡単な自己証明。存在の自己承認。他者承認。
 君が信じた私を私は信じる。
 
 ひとりになるとは思っていなかったから、不意をつかれてよろけた。悲しむまもなく、時間は同じ速度で過ぎ去っていくから。風に押されて、前に進むしかなかった。タイムラプスで撮った早回しみたいに、自分の生活が早送りされていく。実感の伴わない自分を後ろから、僕が覗いているみたいだ。

 

 別に変わりたいわけじゃなかった。ただ、ひとりは嫌だった。

 

 あこがれることはいつでもできて、かなしむことだって、
 いつだってできた。
 たいていのことはいつだってできる。
「いざって時にとっておいてある」

 いざって時はいつまでもこない。
 できなくなるまでは、失うまでは、気づかない。