脱走したい気分だった。きっと誰にも理解出来ない。
これは自分だけの特別な感情だって信じたかった。
さっきまでの走馬燈みたいな幻覚――世界の終わりの幻視みたいな、ビルの屋上から墜落する人々、津波にのみ込まれた街の海へと飛び込むとするりと海と一体化し消えていく。
終わる前に終わらせるんだ。脱出したけれど、決着はついていないじゃだめだ。このままのうのうと生きていけるけど……、もしかしたら悲惨な結末が待っているかもしれないけれど、向き合わないといけない。
抽象的な夜が散文詩のビートを刻んだら。
身体に綿でも詰め込んで、中身があるように見せかけろ。
虚勢で十分だ。想いだけで十分だ。