ただ過ぎ去る
余った時間を全く使えないことに憤りを覚えている。やろうとしていることに興味が出ない、やる気がない。ならば、そもそもやりたいことではないのだろう。やりたいことに優先順位をつけていき本当のものを探そうとしても、探している途中に入れ替わっていく。瞬間瞬間にやりたいと思うことがあってそれに100%をつぎ込めればいいのだが……なかなかうまくいかず、中途半端に何も為しえないのだ。
病的な想像力。
小説を書きたいという想いはあるが、書きたいという衝動は無い。誰かにすごいと言われたい。承認欲求が駆動力になっている。ただだらだらと日々が過ぎていく。
小説という器があって、そこに文章をそそいでいく。
文字数や物語が一定の量を超えると長編小説という形になる。
まず、その器を探しているところだ。
器はそこらじゅうに転がっている。男の子が女の子を救う話。
基本構造から、よりコアで具体的な話まで。
物語のパターンは器だ。器の満たし方は作者によって異なる。
だから同じ物語構造でも全く違う話ができあがる。
全力を尽くせるものを探している。それがどこにも無い気がして途方に暮れる。ただ、一つの文章に全力を尽くす。そういうことは原理的に存在しない。
文章は文脈で輝く。
ラスト近くの文章と序盤の文章は同じでも違う。
ラストに近づくにつれて紐で引っ張られるように張り詰める。
まず、現時点で何も無いことを認識する。
そして、自分の中の地下二階からくみ上げる。
無意識から出てくるものみたいな、自分でもよくわからない文章をよくわからないまま書く。ともかく書く。書くことで意味が見えてくることもある。
器を探しながら書く。ただ、書く。
いつのまにやら器の輪郭が見えてきて、方向性が決まっていく。
君が見えてくる。僕がわかってきて、私が泣き始める。
君が変わって、世界が変わる。
風が吹いて、物語は終わる。