読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

わたしとなにがし

わたしがさまざまなものと場所を観察する。 抽象性と具体性/実験の場。

わたしと嘘つき

「サイミングという言葉を知っているかね? 君は知らないと思うが、人を条件付けるための新しい手法でね。うちの工場で導入したところ作業効率が200%アップした。経常利益が2倍になったということだよ。その絡繰りを教えて欲しいかな?」
 ガードルードは口が裂けてるみたいに口角を上げている。圧倒的な上から目線と愉悦という感じだ。

「じゃあ教えて」
「単純に仕事すべてが楽しいと思うようになったのだよ。仕事をすることでドーパミンが出るよう脳の前頭葉に働きかけた。私の工場に来るとドーパミンが脳からあふれ出し、幸せとともに仕事をするのだ。休憩をとっている間は出なくなるから、彼らは休憩時間を減らして働くようになった。家に帰っても働ける時間が減るからなるべく遅くまで残業するようになった。もちろん私は早く帰るよう言ったさ。残業代も出せないぞと。それでもいいと彼らは言ったよ。最高の部下たちさ」
「仕事するのが気持ちいいのね」
「そう、気持ちいいのは大事だ」
 ガードルードは工場なんて持ってない。紳士服を着ているけれど、金持ちでも無い。よくみると糸の綻びが見えてくる。金持ちと偽っているただの嘘つきの中年だ。