EVERYTHING IS

想起特訓。忘れかけたことを思い出すのだ。

文章

 つまらない文章でも後で読み返すと悪くない場合がある。だから、つまらないと思っても書けばいいし、つまらなかったらまた書き直せばいい。つまらないと明確にわかるならどこがつまらないかがわかるということだから、どう直せばいいかもわかるはずだ。よくわかんないなら考えろ。
 不意に文章って不思議だと思って笑えた。なんだろう? 手放されている感触みたいなものがあった。文章は自分ではない。そこに書かれた瞬間手放される? ものすごく個人的なものであっても客観的なものになる? それでいて限りなく自由。

 常に手を動かさないいけないわけでもない。
 フィジカルに書いてもいいし、カッチリ頭で考えてもいい。
 映像を追いかけて、言葉を追いかけて、じっくりみた後書いてもいい。
 思い出してもいい。感触や感情、音を思い出す、文字を見る。
 読んだ文章の字面を思い出す。
 

観察

 思い込んでいることがだいたい自分を既定していて、そこに縛られてどこにもいけない。なら、何を思い込んでいるのだろう、と考えてみるとよくわからない。自分を解体するためには、自分一人では答えが出ない。どうしても自分が考える自分になりそこから逃れることができないからどうしようもなく他者が必要になる。
 自分の状態やただ見えるものを丁寧に観察する。指先の動きや呼吸、肩や腕の動きの捻転、腸の感触、腹の減り具合、唾液の分泌量、聞こえる音、力の入っている部分。身体的に自分を観察し、何を考えているかを見つめる。
 身体的な変化で心に変化が起こるかを試してみる。
 無表情な顔に笑みを浮かべてみる。笑みに気持ちが影響されるのがわかる。少しだけテンションが上げる。
 眉間にしわを寄せて眼に力を入れ睨みつけてみる。何かしら怒りが湧いてくる。目の前の壁を殴る映像をイメージする。壁に穴が開き拳が血にまみれる。
 眼をきらきらさせてみる。何かに驚いた時のように眼を大きく見開き、口を開く。口角があがると楽しい気分が放出される。「すげぇ!」頭の中ですげぇすげぇ言ってるとテンションがあがる。「無敵」「どこまでもいける」
 そういうテンションが上がる言葉を羅列するとテンションが上がっていく。
 自分のテンションやモチベーションを数値化してみるといいかもしれない。最もテンションが上がった体験などを呼び起こして比較する。
 テンションやモチベーション、感情が高ぶった時のことを思い出して、現在にかぶせるとその気持ちに取り込まれてテンションは上がるんじゃないのか。
 その時の身体と心を両方再現する。
 680

無意識

 同じ言葉を使わないようにしたい。観察しながら見ている。誰かを見ている。君を見ている。君が見ている。見られているし、見ている。君は見られていることを知っている。知っているから笑っている。知っているから見せつける。君はとても楽しそうにキスをしている。嫉妬の炎を燃やさせようとする君の努力は叶うよ。
 うごめく脚の指先が軟体動物のように見える。うねうねと動き一本一本が独立し何かを志向している。
「無害なだけの友達なんていらない」
 無害なだけならいてもいなくても同じだろうか。ただ、有害なだけよりはましだろうと思った。間違えや失敗することが怖い、距離感が怖い。勝手に怖い。怖がって身体がそう反応していると客観的に認識するのが嫌だ。身体が強ばっている。目線が意図的に下に行く。相手をとても意識して無視する。意識していないふりをする。今行っている行為よりも意識が相手に向けられる。
 どうでもよくて興味が無い。なぜ、興味が無いのだろう。それについて知っている情報が元々少なく、知ろうとする動機が無い。知るための労力がかなりかかる。人に興味が無い。その人を知って何の意味があるのだろう。相手を知りたいと思うのはなぜだろう? 知って何を満たすんだろう。 その人間の知る度合いが%で見えている。すべての情報を手に入れると100%になる。しかし、しかしだ。自分さえ知れていない。彼女のことをまだ3%しか知らない。そう考えると穴埋め問題みたいにすべての枠を情報で埋めたいと思う。
「……人を殺した」
「流れていく血が、失われていくものを現わしていた。物質的だったが、もっと実は精神的なものだった」
「流れ出ていくのは意味でもあった」
 私は君を発見したけれど、君は私のことに気づいていない。視線の非対称性に途方もない喜びを発見した。私だけが見てる。君を見てる。
 気づいてる。
 君はほんとは気づいている。君が気づいていることに私は気づいていない。君は偶然を装って視線を交わす。
 私と君が一つの世界にいることを実感する。
 地図に行き先は書いていないから、目配せする。
 私が走ると君が走る。
 

 おんぼろの階段は下れば下るほどぼろぼろに崩れていく。堕ちていく階段を見ながら私も自由落下する。着地する先は決まっているだろうか。

「最初から決まっていることに喜びを見いだせる」

「それって素晴らしいことだ」
「予測可能なすべて知っていることに感動する」

 知らないことを発見する。

 1014

 

 

 

 

 

 

 

皮肉

「駄目なんだ……と不意に思って、それからもう駄目だった。一度囚われてしまったらもう出てくることはできない。私がいかに駄目なのか、周りをどれだけ不幸にしているのか……。灰色の雨が降ってくる。とぷんと絶望の海の中に全身を浸して漂っているような……そういう気分が身体を覆って悲しみが枕を濡らす……。なにもできない私なんかは死んだ方がましなような気がする」
「おまえは真面目すぎる。絶望に喜びでも見いだしてんのか? 迷惑はかけたっていいし、周りが優しくしてくれたら受け取ればいい。優しくしてくれるってことは、おまえが優しくさせたってことだ。周りが助けてくれるってことは、おまえが助けられるよう周りを動かしたってことだ。おまえのおかげで、周りの人々は優しくできて人助けもできる。優越感や上機嫌に浸って最高な気分だろう。おまえは特に、本気でありがとうと言う嘘のつけない人間だから、なおさらだ」
 少女の顔をしている、君は一人だったり、寂しかったりする。傷ついた顔をして、風に髪が靡き、その痛みを振り切るように顔を上げると空は青く、日射しは眩しく河面の水面はきらめいている。車が通る音だけが通りすぎて、人の気配だけが襲ってくる。記憶の残響が場所の記憶に残ってる。フラッシュバックする幾つもの世界が君を一人にはさせてくれない。立ち上がり思い切り叫びたい気持ちを飲み込んで一度頭を大きく振ると君は走り出す。
「あたし、昨日幽体離脱した……」
「え、マジ?」
「夜の街を上から俯瞰して見てる感じで、気になる場所には近づけるみたいな」


「相手の言葉をちゃんと読み取るってテレパシーみたいなもんじゃないか」
「なんとなくで勝手にわかったような気になってる気もするよね」
「全部お世辞で本気で皮肉だよ」
「わからなくていいと思っていればいいよ」
「僕はそういうの完璧に分からないと気が済まないから全部聞くよ」
「……それはうざい」

 

地面から人が生えてくる現象が起こり始めてから一週間が経った。
一週間もたつとだいたいわかってきて、生えてくるのは忘れ去られた感情どもだ。俺の知り合いの過去の記憶だとか、未精算で未解決の問題だけれど、本人だけが忘れている大事な思い出をピンポイントで抱えた存在が地面からいきなり生えてくる。解決するまで消えないし、2メートル以内をキープするしで俺だけに声が聞こえるわ、うるさいわで、感触もちゃんと感じるのに、俺だけにしか見えないしもう嫌。それで問題解決すると、本人の中でもその問題が解決するのか、俺の周りのやつらが精神的に成長しだしてうざい。成長するってどういうことだよいったい。昔の俺はまだ生えてこない。

1091

穴埋め問題

 知らない旅館の中にいる。仄暗くどこにいるのかもわからず、窓から差し込む月明かりだけを頼りに進む。気づくと外に出ていて夜の坂道を登っている。上り坂は気づくと下り坂に変わっていて、下った先に変わった露天が立ち並ぶ。川沿いに並ぶ露店には中性的な店番の男が立っている。赤い装束を着て、提灯を持っている。結婚式の会場に行かなければならなくて私は急ぐ。車が急発進をして、坂道を登っていく。坂道の頂上に旅館があるが、なかなかたどり着けない。木にぶつかる。絶望感が私の肺腑を焼く。どうしようもなくなり、失われた何かに穢されながら、墜落感とともに車を降りる。明滅する光が人のシルエットを映し出す。
 自分で選んだ、と思っていることが実は他者の判断や社会的判断の影響を受けていることってよくある。だから、自分の決断だと思っても、読んだ本の受け売りや、いままでの経験則や誰かのコピーだったりする。まぁ、そんな影響を受けた決断それ自体がいままでのすべてで構成された今の自分なわけだから、これが自分の判断だと自信を持って言ってもいいんじゃないか? 確信は無いけれど。
「ありえない。確信を持った断言以外ありえない。そうでなければ言葉を発するな。曖昧なことなど罪悪だ。決心や確信の無い言葉は空虚な意味の無い言葉だ。言葉の意味と自分の感情がシンクロしていなければ言葉は伝わらない。伝わったとしても空虚な感情の籠もらない、記号としての言葉がゴーストとして、君とは全く関係ないその言葉を聞いた他者によって解釈され増幅されたものだ。常にすべてを籠めてしゃべるべきだし、語るべきだ」
「あー、今日も書けないだめだー」
「そんなこと無い。書けてないわけじゃないよ。元気出して、センセイは天才なんだから。机に向かって1時間も立てば、名作の芽がひょこっと顔を出すよ」
「あれ、そうかな……そうかも。僕は天才!」
「そうだよ、テンション上げてこ」
「うぉおおおお書くぜー」
 とモチベーションを保ってくれる存在が近くにいるととてもいい。それは脳内でもいいが、現実だともっと言い。自信と喜びによってモチベーションは保たれる。自分が書いていて楽しい。それを読んでおもしろがってくれる人がいる喜び。
 
 書いていてつまらないと感じるのはなぜか? おもしろいと思って書いていないだろうか。画面にたいして書くのと手書きで書くのはどう違うんだろうか。
 ただノルマをこなすように文章を埋めていくのに意味はあるだろうか。

1020

 

感情教育

 いつもいつも思うことがある。全能感、高揚感、情熱、美しさ、すべてが美しく見えたあの瞬間がどうすればやってくるのだろうか。感情が摩耗していく。自分の感情さえよくわからなくなって、鈍感になっていく。ひどい言葉を言われても傷つかないし、何も感じない。反発もせず、言うことを聞くだけの機械になっていく。そうなると便利に扱える道具だ。空気に逆らわず、相手を傷つけるような言葉も言わない。
 無害な存在になる。「君は無害だから好きだよ」
 誰も傷つけず、他の人の感情も響かず、心は動かず、涙の前で表情を変えない。困っている誰かがいたとして、どうでもいい。人のことを考えて行動しているわけではない。そうした方が社会的にいいから、いいと思われるから行動している。自己中心的な考えに囚われている。反射的に感情が飛び出し行動するようなことができなくなった。行動の前にまず、自分の利益に反しないか、自分に傷がつかないかどうかを気にする。もし、傷ついたとしても「傷ついていないこんなもの」と自分を誤魔化すので気づかない。本当は深い傷がついているのかもしれない。目に見えない傷はいろんな人についているのかもしれない。
 欠落した感情を取り戻すためには、些細なことで傷ついて、些細なことで死ぬほど喜ぶ必要があるのか。素直に感じたままに反応する。たとえ、外に見えなかったとしても、心の中でその感情が起こっていることを認識する。
 感情について習ったことがない。
 心臓のドキドキを高めていったら、世界の見え方は変わっていく。ドキドキが消えて、平凡な世界になる。心拍数を上げるために全速力で走ったら少しは気持ちよかったけれど、桜が舞い散るこの瞬間が、花火が打ち上がるこの瞬間が、一瞬の至高が一瞬で遠くなっていく。忘れて忘れてどこにいったのかもわからない。その気持ちを再現することさえできずに、再現しようと夢見ている。
 手に入れてしまったら嬉しくなくなる。ただ高揚したい。喜びを味わっていたい。
 自分が知らないことを生み出したい。自分が知っていることを書きたいわけじゃない。知らないのにすごい。果てしない。空の向こうのような。機械都市の中心で爆発が起こる。地雷を踏み砕いて、爆発の向こうへ行く。麻薬中毒の母を持つ黒人男性が自分のライムでのし上がっていく。音と物語が絡み合って、過去と未来が行き来する。4つうちのビートが身体を震わせる。生起する物語の中で、意味を感じる。

1017

BABY DRIVER

 リズムが大事だってことを伝えてくれる。そう、リズムだ。わかっていたんだ、きっと。忘れていただけでさ、きっと、リズムを無視している文章は大嫌いだし、大事だぜ。ドンって近くにあった机を叩くと、誕生日ケーキに近づいた猫が散っていく。するりと見えなくなって、どこにいったのだろう。
 無かったことに何回かできたら喜ぶよ。一日3分だけ時間を戻せる。使いどころはどこだ?
 肉の塊が転がっている。皮の集まった巨大な球体のような場所から手足が出ている。床に接した六本ほどの脚が動き、長く伸びた身体を動かしながら前に進む。眼も無ければ、口も無く、手と足が無秩序にわしゃわしゃ動いている。ビニール袋に大量の虫を入れた時のことを思い出すようだ。
 数年会っていなくても関係性に変化は無いのだろうか。君と話したことが無い話がある。僕は君では無い。君の変化はよく見えない。「よう、ひさしぶり」「おー」
 アパートの隣に女の子が越してきた。よくある話だ。
「屑に屑って言って何が悪い!」
 僕の部屋でボガーズが叫んでいる。いけ好かない男に悪口を言ったところ顔面をぶん殴られたのだ。ゲームのコントローラーを握って、ヘッドショットを繰り返している。正直なのが美徳なのはいつの時代までだろうか……。
 ドンドンッとノック。
 ソファーから身を起こし、ドアを開ける。女の子が立っている。(描写)

「隣に引っこしてきたソフィアよ。よろしく。これ、マルガリータ
 僕はピザを受け取る、箱が冷たい。
「よろしく。僕はリンジ後ろに見えるのはボガーズ。ところで、このピザなんで冷たいの」
「あぁ、昨日買っていらなくなったやつだから」

 夢を食べられる。
「私は夢を食べられてしまったから。場末のファミリーレストランでウェイトレスをして暮らすの」
「毎日笑顔を浮かべながら、強盗でも入らないかなぁと思いながらね」
「コーヒーでも飲む?」

 古い友達とか、元友が集まってくる。
「俺のこと覚えてる? 覚えてないかぁ……まそんなもんだよな」

 文字数を埋めるだけの文章なんて吐き気がする。はけないけれど、実際には身体的に吐き気がしているわけではない。比喩だ。ほっぺたがぷにぷにしているから殴りたい。触ってから殴りたい。でも殴ると硬くなってしまうから、殴らないよ。「殴る!」殴った。そういうこともある。人は矛盾しているからね。
 不可思議なことは日常的ではないことだ。まず、日常を構築する必要がある。

 1007